Categorized | Graphic Design, Visual Arts

futte ― Fuyumi Seto

横浜を拠点に、グラフィックデザイナーやイラストレーター、専門学校の講師と、幅広く活躍をしているfutteさんにインタビュー。10年間勤めていた出版社では、より「都会的」なデザインを求められ得意としていたfutteさんだが、今は「作品も自分自身も、よりナチュラルに、自然体でありたい」と語る。独立までの経緯や、作風を確立していくまでの思いについてお話を伺った。

 

■ futte ― 瀬戸 冬実

1977年、神奈川県横浜市生まれ。出版社で10年間グラフィックデザイナーとして勤めた後、「futte」を掲げて独立。女性らしい書籍・雑誌デザインやイラストを得意とし、美しい装丁デザインを日々、追求している。装丁デザインの代表作は「かわいい写真の撮り方手帖(毎日コミュニケーションズ)」。そのほかにも「鎌倉和楽家具」とのコラボレーションによるポストカード販売も行っている。また、美術学校でブックデザインも教えている。
●Official Website: http://futte.petit.cc
●Twitter: http://twitter.com/futtefutte

 

― 基本的なことからお伺いします。デザイナーになろうと思ったきっかけは、何かあったのですか?

「きっかけ」と言っても、転機と呼べるようなものは何もなかったように思います。小さい頃から絵を描くことや美術の授業が好きでしたので、常にどこかで決まっていたような気がしますね。私にとっては、自然の流れで今こううなっている、というような。ただ1つ挙げるとすれば、印象に残っているのは高校2年生の時に観た、マーク・ロスコの展示会でしょうか。あの時に感じたインスピレーションはすごかった。あの色遣い、美しさ! 絵やデザインの方に進みたい、と心を固める1つのきっかけになったと思います。


― 「自然な流れ」って、なんだかfutteさんに合いますね! futteさんは作風にも「自然」や「自然であること」が投影されているように感じます。イラストを描いている時やデザインをしている時には、どんなことを考えているんですか?

どちらかというと、考えすぎないようにしているんですよ。おっしゃる通り、「自然であること」とか「自然なものを形にする」っていうのは私の中ではテーマなんです。なので、例えば花のイラストを描いていると、自然と「花だから、水が欲しいよね」と思って雨を描いたり、太陽の光も加えていったり……っていうように、描きながらイメージが湧きあがっていくようなことが多いんです。自然の「声」を聞きたいから、音楽とかも聞かないんですよ。例えば海辺で、風や波の音といった自然の「声」の中で、ただただ絵を描いたりします。

― 自分が描いている自然が、自分自身に語りかけてくる、という感じですか?

そうそう、まさにそんな感じ! 例えば、この絵もそうです(左)。水があり太陽があり月があり……そのまわりを植物と生き物が回っている、っていう、自然の営みを表現しているんです。

― なんだか素敵ですね。可愛い! でも、私が一緒にお仕事をしていた頃の瀬戸さんは、バリバリ働く雑誌のエディトリアル・デザイナーって感じでしたよね。いわゆる「媒体ありき」のデザインをする時は、どんな感じなのですか?

仕事でデザインをしている時は、私、実はお仕事をくれた人の喜ぶ顔を想像しながら作っています。1人でアートとしての作品を作っているというよりも、一緒に作っている編集さんとのコミュニケーションが大切になってくる。音楽とかも聴きながら仕事しますしね。

― 同じ創作活動でも、futteさんの中ではかなり異なるもの、なんですね。おもしろいです! 出版社でのエディトリアル・デザイナーの仕事を辞めて「futte」として独立したのは、なぜなのでしょう?

これも、ちょっと「自然であること」に関わってくるんですけど、私、28歳の時に、一緒に仕事をしていたアート・ディレクターの方に、はっとするようなことを言われたんです。「君のデザインは、すごくキレイにできているね。でも、パソコンで作られたデザインだね」って!

― わあぁ! 衝撃的! 私、関係ないのに鳥肌立ちました! 私だったら、落ち込んでしまうかも……。

でしょう?(笑) 本当に、衝撃的だった。でも、落ち込むというよりも、いい意味で目が覚めた、かな。そこでね、気づいたんです。「あ、私なんでこの仕事を選んだか忘れてた」って。私、今でこそ「自然」をテーマに作品作っているけど、出版社での仕事は本当に、商業的なデザインばかりだったから。生活とか考え方とかも、どちらかというと“都会派”って感じだっんです。もちろん色々勉強にはなったし、いい経験だったんですどね。

― 昔は“都会派”だった、っていうのは、意外ですね……! ではその辺りから作風を変えたり、独立へ気持ちが向いたのでしょうか?

そうですね。とりあえず、自分自身のために絵を描くことを、また始めました。あとはイベントをやったりとか、楽しみながらクリエイティブなことをしている色んな人と会ったりとか。とにかく精力的に活動を始めてみたんです。そして、そういう人と出会っていくうちに、「私は、このまま会社員で人生を終えていいのかな」って、思えてきたんですよね。


― 人生の転機が訪れた! って感じですね。

本当に!(笑)不思議なものでね、そうやって自分で行動を起こしていったら、自然と会社以外の仕事が入ってくるようになったのよ。

― 会社にいながら、フリーランスの仕事が入ってくるようになったってことですか?

そうなの。その流れがあって、29歳で独立できたんです。一連の出会いや出来事が、あまりにも自然だったから、「私がこの年で独立するって、前もって決まっていたのかしら」って、思いました。そのくらい、自然な流れでした。

― 理想的ですね! そして実際に独立し、作風もよりナチュラルな方向へ、変わっていったのですか?

そうですね。これも本当に不思議なんですけど、どこからか、色んな仕事がやってきたんです。人と人とがつながって、どんどん広がっていって。それで色々とやっていくうちに、「企業のエディトリアルデザイナー」のカラーが抜けていき、自分のカラーとかテイストが、つかめてきたんです。本当に、「人との縁」は大切だなって、感じるようになりましたね。

― すべての流れが本当に自然で、素敵ですね。今、デザイナーとしてお仕事をされていて、一番「楽しい!」って思う時って、どんな時ですか?

それはもう、可愛いものができた時、でしょう! 本とか作っている時にいい作品ができると、完成した瞬間に担当の編集さんに電話しちゃいますもん。「可愛いのできたよー! 見てみてー!」って。(笑)


  
左から、ほうずきをモチーフにしたテキスタイル、ナチュラルLOVE&Peaceをテーマにしたイラスト、和柄を彫ったハンコのテキスタイル。

 

― 素敵ですね! 本当に、楽しそう。でも、フリーでお仕事をしていれば、辛いこともあるかと思います。そういう時は、どうやって解消しているんですか?

うーん……。1番の薬は、寝ること、でしょうか(笑)。私、あまり仕事のことで人に相談したりとかしないんです。なので、落ちるところまで落ちたら、あとは上がるしかない! と思って寝ちゃいます。大抵、それでよくなっちゃうんですよね。


― いいなぁ! これもまた、理想的(笑)。では、futteとして独立されて4年目。今後は、どうしていきたいと思いますか?

デザイナーとしてこうなりたい、こんなことやりたい! とかは、ないですね。いいものを作っていきたい、とは思いますけど、ガツガツはしたくない。マイペースに、のんびりとやっていきたいです。私の「futte」っていう名前は、ドイツ語で家とか小屋という意味の「Hutte」からとっています。イメージとしては、森の中とかにある平屋の家で、のんびり物づくりに勤しむような、そんなライフスタイルが理想なんです。なので、「Hutte」に、私の名前の「Fuyumi」をかけて、「futte」。のんびり平屋のお家に住んで、たまに森林浴をしながら作品作りをする……そんな生活スタイルを目指してつけた名前なんです。だから、そんな生活を実現したいかな。

― 今、横浜にお住まいで、たまに海で絵を描いている……なんて話を聞くと、理想に近い暮らしをされてるのでは? って思っちゃいますけれど。

あ、そうかも(笑)。つまり、今の暮らしが、けっこう好きなんです。

― 単純に、うらやましいー!(笑) では最後に、自然体でクリエイティブな活躍を続けるfutteさんに、10.マガジンから質問です。futteさんが好き、あるいは影響を与えられている思う言葉を10個、教えてください。

単語ではなく、本当に言葉になってしまうんですが、こんな感じです。
 1) 「Happyは、自ら切り開く」
 2) 「悲しみを、優しさに」
 3) 「ありがとう」
 4) 「2人でいれば、ひなたかなた」
 5) 「悲しみを優しさに」
 6) 「空は大きくてあたたかく、私を抱きしめてくれる」
 7) 「季節の匂いに、敏感でありたい」
 8 ) 「Everything is gonna be alright!」
 9) 「記憶する人生」
 10) 「人生を、楽しむ」

誰かからもらった言葉だったり、歌の歌詞だったりするものも多いのですか、心に残っています。イラストやデザインのインスピレーションにもなる言葉たちです。

― ありがとうございました! これからもご活躍くださいね。

こちらこそ、ありがとうございました!

 

※futteさんが装丁を担当した「産後ビューティ(ワニブックス)」の出版記念イベントが、9月4日(土)18:00から渋谷の「YAFFA ORGANIC CAFE」にて開催されます。内容は、著者の柴崎マイさんによるトークショーなど。詳細はこちらから

 


取材・文・写真:山田 夏紀

 

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